戦況がはかばかしくないことから、大将の 光経は、主な家臣を集めて協議をしました。 (この上は、神仏の加護をねがって、その後 勝利に 驕る敵の隙をつこう) と言うことになり、三上 類家 西沢の 三人の家臣に命じ、出羽の国、月山へ改めて 先聖祈願を行わせることにしました。 祈願を始めてから七日目の二月の八日の夜、 光経は不思議な夢をみました。大慈寺創建と秋田征伐(夜明けの空に、南の月山の方から飛んで きた二羽の鶴が舞っています。さらに九つの 星が空からふってきて、光経のふところに 飛び込みました) そこへまた、祈願所にこもっていた三人の 家臣からも、殿様と同じ夢をみたとの報告が とどきました。 光経は、家臣の新田行親に夢解きを させました。 (鶴は長生きの目出たい鳥、九つの星が 落ちてきたのは、秋田九万石が手に入ること。 これは味方の勝利を告げる霊夢にちがいなし。 早速に出陣を) ということになりました。 二月十日早朝、陣中の上空に、本当に 二羽の鶴が飛んできました。 将兵の士気は最高に盛り上がりました。 「いざ出陣」 という間際に、陣中に一人の旅の老僧が 現れました。 (私は旅の禅僧です、敵は伏兵を用意し、 南部の軍勢を挟み撃ちにする作戦を立てて います。ご注意をせられよ)と告げて 去りました。 これにより、南部軍は先ず伏兵を急襲し、 その後南部軍侮って、油断しきっている敵の 本陣をついて、大勝利をおさめることが できました。